みなさん、「遺伝」「がん」「がんゲノム」といった言葉を耳にしたことはありませんか?実は「がん」「遺伝子」「ゲノム」は大きく関係しています。近年、日本では「がんゲノム医療」が取り入れられ、皆さんが耳にする機会が増えてきています。そもそも「がん」ってなにかなどをはじめ、一緒に考えていきましょう。
本ページ中の図は下記図書を参考にしています。
引用:小杉眞司(監修)、和田敬仁(指導)、十川麗美(企画・制作)他
遺伝カウンセラーと学ぶ『がんゲノムを知ろう!』~「遺伝子」と「がん」のおはなし~
2018年11月初版発行、2019年2月第2版発行
1.がんの原因とは?
「がん」とは、正常な状態の細胞に対し、細胞が増えるのをコントロールできなくなった状態のことです。「がん」の要因としては、「遺伝要因」と食事や運動、タバコ、ウイルス、お酒などの「環境要因」があります。がんと診断される方の約1割は、遺伝性のがんと言われています。
では、どうしてこれらの要因が「がん」を引き起こすのでしょうか?
これらは遺伝子に特徴を与えるからです。
2.遺伝子とは?
私たちの体の細胞の中には約2万個の遺伝子が含まれており、遺伝子は親から子に伝える「人の設計図」に例えられます。
遺伝子はDNAから成り立っており、DNAや遺伝子などをまとめて「ゲノム」といいます。遺伝子は私たちの体の健康を保つために大切な役割をしており人の顔かたちだけでなく病気へのかかりやすさなどの体質にも関係しています。
3.がんと遺伝子の関係は?
健康に生きていくのに大切な遺伝子がうまく働かなくなると「がん」につながります。
遺伝子の特徴には、病気に関係するものと、個性を表現するなど病気に関係ないものもあります。病気に関係する遺伝子の特徴があると、細胞が多く増えるのをコントロールすることができなくなります。
最近では、病気に関係する遺伝子の特徴がわかってきており遺伝情報を用いて病気の早期発見や健康管理が可能になりつつあります。
4.がんゲノム医療とは?
人は皆、全身の細胞の遺伝情報は全て同じですが、遺伝子に変化がおこるとがんにつながります。
このがん細胞のゲノムを「がんゲノム」と言います。近年、がんの患者さんの「がんゲノム」を調べ、遺伝子の特徴に基づいたひとりひとりに合った効果的な治療法に繋げられるようになりつつあります。
たとえば、今までは乳がんの場合、胃がんの場合などがんの種類ごとで治療薬が考えられていました。しかし、A遺伝子の変化がある人にはA遺伝子に基づいた薬、B遺伝子に変化がある人にはB遺伝子に基づいた薬など治療に繋げることができます。
5.私ってがん家系?
「がんは遺伝する」と聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。がんを引き起こす要因には「遺伝要因」があります。
がんと診断される方の約1割は、がんになりやすい遺伝子の特徴を持っており、次世代に受け継ぐ可能性があると言われています。
このような体質を持って、原因の遺伝子が分かっているがんを「遺伝性のがん(遺伝性腫瘍)」と言います。
通常、人はお母さんからとお父さんからの遺伝子を1つずつ受け継ぎます。しかし、受け継いだ1つの遺伝子に生まれつきがんになりやすい遺伝子の特徴があると、うまく働きません。残りの1つに病気に関係する特徴がなければがんにはなりませんが、2つとも病気に関係する特徴がない人よりがんになりやすい体質と言えます。
「がんになりやすい体質」を知ることは、がんの早期発見・早期予防に繋げることができます。また、遺伝情報は血縁者間で共有されているので、自身の体質を知ることは血縁者のがん予防や健康管理にもつなげることができます。例えば、お父さん、お母さん、兄弟、姉妹などの遺伝情報はあなたと50%共有しています。
6.遺伝カウンセリングとは?
がんが血縁者にも影響するか気になるときや遺伝について詳しく話を聞きたいときは「遺伝カウンセリング」で相談することができます。
「遺伝カウンセリング」とは、遺伝性のがんや他の病気を心配されている人、血縁者への影響が気になる人やその血縁者などを対象に、ひとりひとりに合った説明や心理的・社会的サポートを行い、一緒に考えていくものです。
ひとりひとりが「がん」「遺伝」「がんゲノム」を正しく理解して、健康に役立てていくことが大切になります。